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BRAIN and NERVE ISSN 1881-6096 (Print) ISSN 1344-8129 (Online) 61巻1号(2009.01)P.18-26(ISID:1416100409)

特集 脳神経倫理
脳科学が社会に及ぼす影響

美馬 達哉 1

※1 京都大学大学院医学研究科高次脳機能総合研究センター

【キーワード】 neuroethics,cognitive enhancement,brain-machine-interface,Ritalin(R),ELSI (ethical,legal,and social issues)


はじめに
―認知的エンハンスメントをめぐる問題
 今,オリンピックなどでのドーピングと同様に,脳ドーピング(brain doping)が問題となり始めている。スマート・ドラッグと呼ばれる薬物などを用いた知的能力の人為的増強・強化,つまり認知的エンハンスメント(cognitive enhancement)1)が可能となりつつあるからだ。
 実際に米国では,試験を控えた学生などが,日中に異常な眠気を生じる病気であるナルコレプシー治療などに使われている薬物であるリタリン(R) (一般名:メチルフェニデート)をインターネット経由で入手して,それを利用して成績を上げようとするケースがあるらしい。リタリン(R)を病気治療目的ではなく,健常人が服用した場合でも,眠気をとったり,集中力を高めたりする働きがあるからだ。
 このリタリン(R)も含めて,一般的に脳ドーピングに使われるのは,中枢神経刺激薬である。コーヒーや日本茶に含まれるカフェインもその一種で,眠気覚ましと集中力アップという効果はよく知られているとおりだ。もちろん,コーヒーに含まれる程度の量のカフェインで頭をはっきりさせることは違法ではないし,倫理的問題を生じることはない。その一方,法的な取り締まりの対象になる覚せい剤のように,依存性や毒性が強いものもある。医薬品として使われている薬剤を利用することの倫理性という問題は,ある意味では食品と違法薬物のボーダーラインと言ってもいい。
 2008年1月には,非公式ではあるが,60カ国の約1,400人の読者を対象としたインターネット調査を科学雑誌Natureが実施し,リタリン(R)モダフィニル(ナルコレプシーの治療薬),βブロッカー(不整脈や高血圧の治療に使われるが抗不安作用がある)の病気治療目的ではない使用をした経験を尋ねた2)。その結果,これらの薬物(それ以外の同様の薬物を含む)の使用経験ありは5人に1人で,うち62%はリタリン(R)だったという。厳密な調査ではないため,データの信頼性という面では問題はあるものの,認知的エンハンスメントが現実味を帯びた問題であることをうかがわせる。また,今後,より効果的で有害作用の少ない睡眠異常症治療薬が開発されれば(これは患者にとっては好ましいことである),医療ではないエンハンスメント目的での使用が拡大する可能性もある。
 これは,脳科学に基づく医療技術の発展が社会に与える影響の1例である。脳神経倫理(neuroethics)が果たすべき役割の1つは,こうした問題を倫理的・社会的・法的に検討することである。認知的エンハンスメントなどの脳科学技術の発展がもたらしうる諸問題に関して,わかりやすく検討するために,架空の物語ではあるが,ダニエル・キイスによる世界的ベストセラー『アルジャーノンに花束を』(原著1966年)3)を例に挙げて,整理してみよう。


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